犬吠埼の灯台の近くで歩ける遊歩道から見た朝焼けの景色を描いた。
日の出の時間を確かめ、まだ暗いうちから犬吠埼の宿を出て
いいところがないかと探し歩いてみつけた場所だ。
別の日なら違う場所がいい場所になるかもしれない。
前日の天候の悪さが跡を引き、暑い雲が空を覆っていたけれど、
その隙間を縫うように陽光が漏れ、落ち着いた海を照らしていた。
初めは現場で描くことも考えていたのだが、
あまりの風の強さに体が震えて断念した。
季節が違えば実現したかもしれない。
灯台近辺を歩き回り、写真を撮りまくって宿に戻った。
「現場で描く」という計画は頓挫したが、
結果的にそれはよかったのかもしれない。
じっくりと時間をかけて海の描写、必要な色を考えることができたからだ。
水平線間際の部分には単色買いしたシュミンケを使用している。
シュミンケは高額でセットでまとめ買いする余裕はない。
新宿の世界堂で写真と見比べながら探した色だ。
残念ながらメインで使用しているレンブラントにはこの色はなかった。
しかし稜線から下の部分の広がりはレンブラントを使っている。
海の稜線を描くためだけにシュミンケを使ったのだ。
混ざり合う部分のわずかなグラデーションにだけ気をつけて、
海の大部分は深い色で塗りつぶした。
こういう違うメーカーのパステルを使い分けるやり方は他の絵でも使っている。
レンブラントも悪くはないが、とくに明るい色の発色はやはりシュミンケがいい。
国内でシュミンケを単色で買える場所はどれくらいあるのだろう?
新宿世界堂以外でどこか知っている人がいたら教えて欲しい。
Amazonで探すと単色もあるけれど、こればかりは実際に現物を見た方がいいと思う。
画像と実物では色味が違う。
海の描写で重要だったのは、深い色の上に薄い紫を重ねたことだ。
朝の陽光に照らされる海面上の光をどう表現するか、
この問を解決したのは「時代」と言えるかもしれない。
どういうことかというと
僕は撮影した写真を可能な限り拡大表示させて光っている部分の色を確かめたのだ。
こんなことは写真がない時代にはもちろん不可能だし、
デジタルでなければ存在しなかった機能だ。
おかげで僕はその光が紫の色味を帯びていることに気づくことができた。
そして実際に「これ」と思った色を重ねた瞬間、
「やった」
と思えた。
自分の中に何かを確信したときのような感触が生まれた。
あとは勢いに乗るだけだった。
大きな課題としては空の描写だろう。
正直言って手持ちの色が足りない。
光の中心にもう少し赤みというか、オレンジが欲しい。
オレンジ系統の色を何度か試したが強すぎて変になってしまう。
パステルの欠点は細部の混色が難しいところだと思う。
やりようはあるのかもしれないが、思いつかない。
出来上がった絵を友人に見せたら
「売っていいと思う」
とかなりの褒め言葉をもらえた。
嬉しさの反面で
(ほんとかよ)
とも思いつつ、個展を開きたいと思い始めたのだった。
単色買いした色はこちら↓
セットで買うならこれになりそう。高い。
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